概要

20世紀後半、科学において我々は一つの大きなパラダイムシフトを経験した。それは、平衡系の熱力学と言う静的な自然観から、非平衡系の熱力学、とりわけ非線形非平衡系を基盤とする動的な自然観への大きな歴史的転換である。こうして生まれた非線形非平衡科学に対して、残念ながら、当時の数学は対応できなかった。しかしながら、非線形非平衡科学に現われる様々な現象を記述するモデルとして、反応拡散系が登場することから、この新たな科学の風が数学、とりわけ非線形解析学の分野に吹き込まれたのである。このような流れの中で、我が国ではそれに接近する数理科学(数学)集団が着実に育ってきたのである。このことから、非線形非平衡科学の理論的支柱である反応拡散系の数学理論を構築することを研究課題として申請することが可能となったのである。このような研究はこれまで数学からはほとんど行われていなかったことから、今回の学術研究としての特徴は、この研究を遂行することで数学が自然科学の理論研究に積極的に貢献できることである。

当該研究から期待される成果

数理科学の分野、特に数学の視点から非線形非平衡現象の解明に挑戦するという研究課題は独創的であり、我が国において最初の試みである。この研究課題が達成される意義は数学の一分野である解析学に新たな展開が生まれ、それによって数学が学際的研究分野として更に大きく発展することである。今回の研究課題が達成されるならば、自然科学と直接的な接点を持つ解析学の新たな発展が期待されると共に、この成果から,非線形非平衡系科学の理論研究の発展に対してこれまで貢献出来なかった数学が自然科学の一分野として積極的に参加できることであろう。

当該研究課題と関連の深い論文・著書

  • 「パターン形成とダイナミクス」非線形非平衡現象の数理④三村昌泰監修、東京大学出版会(西浦廉政(北大)、栄伸一郎氏(九大))
  • 「生物にみられるパターンとその起源」非線形非平衡現象の数理②三村昌泰監修、東京大学出版会(第1章)(松下貢(中央大))